
音の聞こえかたや質を音色というように、音は色のイメージも連想させます。
色と音の感覚については「色彩とパーソナリティ(著)松岡武」でも、俳句の例など文壇の隠喩で色が音に使われた例などがいくつか載っていました。それ以外にも色を使った慣用句もあります。
色から連想する音、音から連想する色などをアンケートする場合、歌や連想から似たような音を連想することはあるものの、香りやパッケージの色とは違って感覚の幅が大きいものではあります。
特定の人には共感覚として音に色がついて見えるそうで、それを色聴と呼びます。これは一般的な人の持つイメージとはまた違っています。この色聴保持者は絶対音感を持っていることも多いそうですが、特に大人より子供の方が持っている率が高く、成人では1割程度と少ないそうです。大人になると失われてしまう能力なのでしょうか?
(ちなみに共感覚には、文字や数字に色がついて見えるもの、曜日に色がついて見えるものなどもあります。こちらの方が多く有名でしょうか)
ただし色聴者はみんな同じ音を同じ色として見ているわけではないようです。色は文化と結びついていることも多いせいか、色聴者でも見え方には個人差があるのか、文献によっても違うことを言っていたりします。
例として、フルートの音色。
前述の「色彩とパーソナリティ(著)松岡武」では、「金子隆芳は、チェロの重厚な音が深い緑や紫に見え、トランペットの明るい音は明るい黄色、やわらかいフルートはパステル調の色、ピアノは白に見える音楽家のケースを紹介しているが~」と書かれていました。
一方で「色彩語を含む共感覚表現に見られる日英語の文化的相違 : 共感覚現象の意味・日本語オノマトペの状況中心性(PDF)」のワシリー・カンディンスキー(Vasilii Kandinskii)という画家の発言に関しての記述では「フルート(flute)は明るい青、ファンファーレ(fanfare)は赤、ホルン(horn)は紫」と言っています。
色から連想する音




「ドレミファソラシド」の色のイメージと色聴
昔、実験で一般人(色聴者ではない)にアンケートを取ったことがあり、結果は下の通り。有名なカール・ジーツ(Kari Ziets)の「色聴」の実験とは結構違っていました。イメージと共感覚は違うという例になるでしょうか。
ド…茶色。濁音なためか、濁った色のイメージ。
レ…レモン色。ドレミの歌から。
ミ…ミカン色。みのつく色。
ファ…パステル系の色。ここで詰まる人が多い。特定の色が出ない人も多い。
ソ…水色。ドレミの歌の青い空→水色/空色。「青い」と歌詞では言っていても、空は水色という固定観念の方が勝つ。
ラ…紫。らのつく色、ラベンダーからの連想。
シ…白。しのつく色。
日本の場合は大体、ドレミの歌を連想する人が多いため(元歌はサウンド・オブ・ミュージックで海外のものですが日本と歌詞は違います)、レはレモンなどと、歌詞にはっきり色が浮かぶものはそれに偏りました。一方でドはドーナツと言っても、茶色を連想する人ばかりではないようです。一般人は音に色が見えないので、言葉から連想しているのがほとんどでした。
カール・ジーツの結果だと、ド「赤」、レ「菫色」、ミ「黄金」、ファ「ピンク」、ソ「空色」、ラ「黄色」、シ「銅色」。フラット(b)が付くと「暖色」、シャープ(#)が付くと「寒色」。ソの空色しか合っていません…。
ピアノや楽器があればそれで実際に音を出して、なければ音をイメージして、どの色が浮かぶか試してみて、ドが赤、レが菫色…と聞こえたら、その人は色聴を持っているかもしれません。(レモン色がイメージされたら一般人…?)もしくはまた別の色が浮かぶかも?
文献・論文
共感覚・色聴については、各方面で研究されているようで、ネットで読める論文などもいくつかありました。

CiNii論文@色彩語を含む共感覚表現に見られる日英語の文化的相違
リンク先にPDFがありますが、音と色についても詳しく書かれていて面白い。「ドレミファソラシド」についても、オーケストラの話など他の例もいろいろ載っていました。

http://ist.ksc.kwansei.ac.jp/~nagata/
ご本人も共感覚を持っているらしく、そういった研究が多いようです。「PUBLICATIONS」のコーナー中のPDFのアイコンがあるものはPDFで文献が見られます。

CiNii論文@色聴